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卒業DIARY 14 「熱情」 千葉丈太郎

 17年間続けてきたサッカーは、自分の中であまりに大きく、今では初めてボールを蹴った日も、初めてゴールを決めた日も、初めて勝った日も思い出せない。何がそんなに楽しくてサッカーを始めたのか、いま思うと、不思議でならない。

 

 サッカーの魅力って、大学サッカーの魅力ってなんだろう。あまりに未知数なこの世界に答えを求め、さまよった4年間。見つけられたもの、見つけられなかったもの。それら1つ1つにどれほどの価値があったかは、手放してから知ることになるでしょう。



 本題に入る前に、世紀の大泥棒、大竹くんからの質問に答えていきたいと思います。




Q1.林くん(4年林)から聞いた噂ですが、千葉さんは最近女に飢えてると聞きました。どうでしょうか?


A1. どうでしょうかとはストレートですね。生スポ主席の大竹くんであれば、もっと婉曲的な表現をしてほしいものですね。

答えはNOです。たしかにひょんなことから合コンの幹事を担ったことは1度ありましたが、それは女に飢えているからではありません。天本くんのように冷めてもいませんが、飢えてもいません。林くんも人が悪いですね、叩けばほこりがでるのがどちらの方かは…止めておきましょう。




Q2.堀くん(4年堀)がいつもバカにしていました。カラオケで歌を歌うときのクセが強すぎると。カラオケで歌う際のこだわりを教えて下さい。


A2.どうも第3者からのタレコミが多いですね、まあそれだけ興味の対象になっていることは嬉しい限りです。なぜ倒置法を使うのか疑問に思って調べました。


『文において、普通の語順と逆にして語句を配置し修辞上の効果をあげる表現方法。』とあります。なるほど、よっぽどクセが強いんでしょう。堀くんとは多いときには、週に3回カラオケに行った仲なので、信憑性しかありませんね。あえてこだわりというのであれば、楽しみ、楽しませることです。笑いものになるのも、しんみり聴かせるのもすべてはaudience次第です。

Viva entertainer!



Q3.真面目な質問を1つ。千葉さんはサッカー面だけでなく学年ミーティングや広報部などのチーム作りの活動の面においても大活躍でした。後輩のみんなへ、チーム作りにおいてのアドバイスなどあればよろしくお願いします。


A3.嬉しいことを言ってくれますなあ。同期からそう思ってもらえたら頑張ってきたかいがあるというものです。


一選手として意見させていただくとすると、、、ただ1つ間違いなくいえることは、今年は今年の正義がありました。これは今年の1~4年生の正義です。ここに嘘をつかずにこの1年、部員全員でがんばってきたんです。だからこそ、この1年間でみえた多くのことがあるはず。受け継ぐも良し、反面教師にするも良しです。みんなはみんな、しっかりと時間をかけて、また話し合って、何を大事にこの1年闘うのか。自分たちが信じ抜くことができる正義を形作っていって欲しいなと思います。


正義のブレは、組織のブレです。そんなことを考えながら、僕はこの1年動いてきました。時には相手から嫌われてもおかしくないような言葉をかけることもありました。そういう伝え方しかできなかったのは、僕の反省すべき点です。ただ僕が何を思ってそう接したかを、少しでも分かってもらえたら嬉しいです。


だいぶ抽象的なアドバイスでごめんなさい。



 こんなところでしょうか大竹くん!他の同期はくん呼びなのに、質問で終始「千葉さん」と距離をとった呼び方をしてくるのは、暗に私が浪人であることの揶揄なんでしょう。いや婉曲的な表現できるんかい。まじめな質問が1つというところがまた大竹くんらしいですね。


 

 それでは本題に入ります。




 自分の言葉で思いを伝えます。伝えたいことを書きます。きっと長くなりますが、お付き合いいただけたらと思います。




 この東京学芸大学蹴球部という集団は、さまざまな環境で育ってきた個の集まりです、なんてことは周知の事実です。エリート街道まっしぐらの選手もいれば、自分のように浪人をして入部してくる選手もいます。育ってきた環境が違えば、価値観も、レベルも、考える進路も千差万別です。そんな状態で、カテゴリーや学年も違えば、お互いに不満に思うことは、ごく自然なことです。

 

 そんな当たり前の事実を理解していながら、僕らはこの1年、「結(むすび)」を掲げ、一体感を持って闘うことを誓いました。



 一体感。よく聞く言葉です。一人ひとりが全体として同じ方向を向いて、進んでいく。大きな力を生む、偉大で、素晴らしい考え方だと思います。これを否定するつもりは毛頭ありません。

 

 ただはき違えてはいけないと思うのは、一体感は無条件に同調することを要請してはいません。違うと思えば、異議を唱えてください。



「育ってきた世界が違うから。いってもわかんないでしょ。相手にされないし。上手だから。学年が上だから。面倒な奴だと思われたくない。仲良しでいたい。興味ない。」


 

 わからないなんて言いません。きっとそれが一般社会においては、普通なんでしょう。言葉にして相手にぶつけるのは、ものすごくエネルギーがいるし、疲れるし、気を遣う。口にすることで責任も負うし、嫌われてしまうこともある。意見を否定されるかもしれないし、反発すらあるかもしれない。

 

 でもその程度のものを怖がる関係性で、何をもって一体感なんだろう。仲間の思いを知らずして、何に共感できるんだろうか。そのチームのどこに私は、あなたはいるんだろうか。




 飯や飲み会で、または合宿でミーティングを開いて、僕らは思いを伝え合うことはしていました。あのあとに生まれる「やってやろう」という感情がどれだけの力になるかを、みんな知ってる。別にそれが非日常である必要はどこにもない。それを普段の練習で、なんでもないミーティングで出来たら、すごく大きなエネルギーを生むはずです。




 練習で考えが合わずミスをしたなら、意見をもとめるんです。気の抜いたプレーをしている選手には要求するんです。自分がどう思っていたのか、そして相手がどう思っていたのか。自分はどうしたいのか、相手にどうしてほしいのか。もっとあなたの考えを聞かせてほしい。考えていることがあるなら、それを言葉にしてほしい。考えていないなら今すぐ考えることをはじめてくれ。別に批判でも大いに結構。そこには素晴らしい学びが詰まってる。

 

 そして批判とおなじくらい、良いこともお互いに伝え合おう。いいプレーがあったら、言葉にして全体で褒めよう。そうしてお互いに理解し合い、考えをこすり合わせていく。一体感の言葉を盾にせず、そうした「面倒」で大切な作業を僕らはもっともっとやっていくべきだったんです。




「その部員のいいところを紙にかいて渡す」


 この夏各カテゴリーでおこなったチームビルディング。みんなからのひとつひとつの言葉が、涙が出るほど嬉しかった。そう思ってくれる仲間のために、がんばろうと思った。部員一人ひとりが部員一人ひとりに、その思いを、そのリスペクトを根底に持てば、このチームは強くなる。だから安心して、思ったことは伝えようよ。そこに学年も、カテゴリーも、通ってきた道も、何一つ関係ない。

 

 ただあるのは、誇り高き紫紺の戦士であるあなたの、同志であるという事実だけ。面倒に思えるその思いが、その言葉が、きっとこのチームを強くするはずだから。深いところで繋がるからこそ、そこに心震わす熱情が生まれるんだ。




「大学サッカーの魅力は、選手一人一人に物語があることだと思う。」


 大好きな後輩の言葉です。僕には僕の物語がある。あなたは、どんな物語を紡ぎますか。あなた自身の言葉で、自分のサッカー人生を語れる選手になってください。就職活動中に一番熱くなった質問。




「あなたはその大学サッカーを通して、何を学びましたか。」


 答えは人それぞれでいい、どんなものでもいい。ただ胸を張って、これといえるものが1つでもあれば。解答用紙も、採点基準も、正解を決めるのも、あなた自身です。

 

 4年間しかない大学サッカー。時間は有限です。でも可能性は無限です。自分自身と真摯に向き合い、人に話し、人に聞き、自問自答を繰り返す。それをするだけの価値がある、僕らは恵まれた環境にいます。

 

 大学サッカーという舞台は、果てしなく残酷で、果てしなく感動的な場所です。想像を超えることもあれば、まだまだこんなものかと思うこともありました。それでも私は大学4年間という貴重な時間の使い道に、大学サッカーを選んでよかったと思っています。

 

 大学サッカーに教えてもらった多くの事、大学サッカーでの素晴らしい出会い。この偉大で、何にも代えがたい大きな喜びを、私は一生忘れないでしょう。




 そして最後に、長くなってでも伝えたいことは、「感謝」です。




 これまで17年間、変わらない熱量でサッカーに取り組んできた自負はあります。それでもこの東学大蹴球部で過ごした4年間は、サッカーをする楽しみに、サッカーを通して集まった人間に、改めて魅せられた時間だったなと思うんです。




 ほんとに尊敬すべき、そして愛すべき先輩、後輩、同期に恵まれました。本当に多くのことを学ばせていただきました。いつまでも応援しています。(ブラザー小野、ジローちゃんには特に感謝してるよ)





 あまりこうした場で個人の名前を出すのは正しくないと思うのですが、あえてこの場を借りて、1人の選手に感謝を述べたいと思います。




 原山海里。僕と同じポジションの選手であり、お互いに意識する存在、いわばライバルです。片方が試合にでれば、片方はベンチ。そんな関係だからこそ、海里のことをよく見てました。


 試合前、試合後、応援席に誰よりも深く頭を下げるのは、いつもきまって海里です。メンバーから外されたときには、誰よりも声を出し、応援していました。試合に出ている側、応援する側の気持ちが分かっているからこそです。海里は本当にお手本でした。この4年間くさらずに頑張れたのは海里のおかげです。ありがとう。


 これからは姿勢で見せていくことはもちろん、言葉で伝えるという役割も期待しています。




「心から人の役に立とうとすれば、結果として自分自身のためにもなるということは、人生における最も美しい報酬のかたちである。」(ラルフ・ウォルドー・エマソン)


 応援が面倒なこともあるでしょう。試合に出れなくてふてくされたくなることも。遠くのボールを取りに行くのも、片づけをするのも、練習中だれよりも声を出すのも、疲れますよ。でもその行為は、自分が思っている以上に周りから見られています。周りの評価はすごく大事なこと。あいつは必要な選手だなって思ってもらえる事はとてつもなく価値のあることです。

 

 そしてそれは絶対にプレーに活きる。つまりそうした行動の一つひとつが、結果として自分自身の為になるんです。そんなことを僕は海里から教わった気がします。ありがとう。来季が素晴らしい1年になることを、心から祈っています。




親愛なる同期へ


これほどまでに面倒くさい自分と4年間も過ごしてくれてありがとう。みんなは僕の誇りです。俺にとっては奇跡です。家族も知らない、あなた達だけが知る僕がいるでしょう。そんなことがたまらなく嬉しいです。素敵な4年間をどうもありがとう。心から感謝してます。


そしてこの先も仲良くボールを蹴って、お酒を飲みましょう。浪人して多くのものを犠牲にしたかもしれません。でも浪人して良かったと、率直にそう思えるのはみんなのおかげです。みんなと出会えた、この大きな財産は、これからも私の支えとなるでしょう。


何度もいうけど、本当にありがとう。




 そしていつでも変わらず応援してくれた家族には特別に感謝してます。幼いころ、朝、日が昇る前から出発して試合に連れて行ってもらうこともありました。そんなこと普通できません、半端ないです。いつでも応援してくれるあなた方に嘘をつきたくない一心で、練習も試合も頑張ってきました。


 いつも試合を観に来てくれてありがとう。試合にでて、活躍して、勝つことが最大の恩返しだと思ってます。最後まで頑張ります。




 そして思えば17年間、本当に泣きたくなるほど嬉しい日々でした。なんて恵まれたサッカー人生だったことか。私がサッカーとしっかり向き合ったのは、小学校3年生の終わり。セレクションで選ばれた選手たちで構成されるクラブチームに入ったときでした。

 

 25人のチーム、みんな上手だった。一番下手くそな自分が、くじを引いて決まった背番号は『25』。

 

 「25人中25番目の選手です。」と言われた気がしたのを、今でもよく思い出します。そんな番号25を自ら背負って、大学サッカーという舞台で自分を表現できたことは、非常に感慨深いものがあります。関東リーグという舞台は、やはり特別です。へたくそな私が、熱情に物を言わせて駆け抜けた17年間。

 

「跳べない理性より、跳べる熱情です。」


 誰しも、やってやれないことはない。




 そろそろ黙ります。次回より、皆さんお待ちかねの方々の登場です。この1年、先頭に立つだけでなく、時に中心で、時に最後方からチームを見てきた彼らがどんな言葉を残すのか、非常に楽しみです。




 それでは次回の鈴木翔太くんに質問をして終わろうと思います。




Q1.同期に頼られ、後輩から愛される翔太ですが、期待する後輩、そして同期の中で結婚するなら誰か、をそれぞれ教えてください。またそれはどんなところからですか。



Q2. 最近、読書に目覚めていると聞きました。おすすめの本を教えてください。



Q3. きっと誰よりも試合に出場してきた翔太。試合に出る上で、または試合に出ている選手として、最も大事にしてきた心構えを教えてください。




 最後まで、この長々とした文章にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。みなさんの存在こそが私がサッカーを続けることができた理由であり、財産です。




「共に歩んでくれてありがとう、幸せなサッカー人生を。(倒置法)」




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