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卒業Diary.8 柴田普天

暦の上では霜降を迎え、吹く風にも秋色の濃さを感じるころとなりました。皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。


このクセのある書き出しは、リスペクトの気持ちを込めて、ある先輩の卒業ダイアリーを参考にさせていただきました。この一年間、鼓舞し続けてくれてありがとう。



今回卒業ダイアリーを担当いたします、A類保健体育科4年の柴田普天です。



まず始めに、ビールで乾杯する飲み会にもかかわらず、気づけば日本酒を片手に後輩を可愛がっている酒豪、天晴からの質問に答えていきます。


Q1.これはハマった!そう思う大学でのツッコミは?


A1.ツッコミのことしか聞いてこん!!!

あ、質問の答えはこのツッコミではありません。3つの質問が全てツッコミ関係というわかりやすいボケに触れないわけにもいかないので、一応つっこんでおきました。


「日照り続きの農家か!」

せっかくなので部活でのツッコミを選ばせていただきました。練習前にグラウンドでスパイクを履いていたときのことです。寒空の下、冷たい雨が降ってきました。選手たちの間で鬱屈とした空気が流れていたそのとき、山雅を愛する男が言いました。

「いい天気だな~!」

はい。これ以上説明はしません。ここから先は各自で楽しんでください。



Q2.2人でいて周りに誰もいない時でもつっこんで、こっちがボケてないのにもかかわらずつっこんでくるヒロくんですが、デートでもつっこむんですか?それとも病気ですか?


A2.それともってなんだよ。そんな病気があったら日本の先進医療もお手上げだよ。もちろんデートでもつっこむよ。一緒にいる時間長くするために遠回りすな!とかつっこむの憧れるよ。



Q3.あなたにとってツッコミとは?(プロフェッショナル風に)


A3.「間」です。結構前からの持論です。どんなに良いワードセンスをもってしても、適切な間をないがしろにしては、ボケの価値が失われてしまいます。今年のトラムカップで、弘前の人と荻窪の人と3人で作り上げた「間」は素晴らしいものでしたね。四年間培ってきた関係が、奇跡を起こしました。気になる人はぜひ聞いてみてください。たぶん2人とも忘れていると思います。





それでは本題に入ります。

今まで自分の思いを主体的に伝えてこなかったので、最後くらいは思っていることをありのままに表現してみます。教訓めいたことは言いません。東京学芸大学蹴球部で経験したこと、考えてきたことを書いていきます。少し長くなってしまいましたが、最後までお付き合いください。




「つっこめ、ゴールへ。」



これは後輩に作ってもらった個人チャントの歌詞の一部です。はじめは深く考えずに応援してもらえることを喜んでいましたが、四年間を振り返ってみると、私の大学サッカーを凝縮した言葉であることに気がつきました。



忘れもしない大学一年の冬、立教大学で練習試合をしたあの日、私は初めてFWで出場しました。15年ほどのサッカー人生の中で、一秒も経験のなかったポジションでした。


小さいころからサッカーを続けてきて、たくさんの試合を見てきたつもりです。しかし、いざ自分がFWとして試合に出ると、どこにポジションをとるべきか、どこに動けばよいのか、何一つわかりませんでした。その試合は、とにかく走り回っていた覚えがあります。


試合中に見える景色が違う。攻め込まれているのに前に残れと言われる。守備の局面で自陣のゴール前にいられないことがもどかしかった。


こんなにも違うのかと、慣れない動きに戸惑っていた時期もありました。新しい競技を始めたと言うと大げさですが、それくらい新鮮な気持ちで練習に取り組むようになってから、はや3年。あっという間に感じているということは、楽しめていたということでしょうか。




FWに求められることは様々ありますが、どうしても外せないのは、やはり点を取ることです。


ボールを扱う技術において、私はチームで最下層であると自覚しています。もちろん自主練でシュートを何本も打ったり、長期オフの期間に学校で練習をしたりして、少しでもうまくなろうと努力してきました。それでも周りのレベルには到底及ばない。



そこで、チーム内の得点王として、リーグ全体の得点ランキングにも名を連ねることができた、二年次のサタデーリーグを思い返しました。


ゴール前でこぼれてきたボールを押し込むだけの得点が多かったため、当時は、ビギナーズラックって本当にあるんだな、と考える程度でした。しかし、ここで気づいたことがあります。「押し込むだけ」の得点こそ、最も技術を必要としないのではないかと。




それ以来、貪欲にこぼれ球に走るようになりました。


大学サッカーで一番印象に残っている得点は、この努力が結果につながったゴールです。昨年のサタデーリーグ最終節、成蹊大学との試合、優勝が懸かった大一番でした。1-1で引き分けてしまいましたが、その結果によって、入学してから初めての上位リーグ優勝を決めました。


1点ビハインドで追いかける展開になった後半、味方の選手が角度のないところからミドルシュートを放ちました。ゴールに入れ!と思いながらも、私は無意識にゴール前へ走っていました。その直後、シュートはポストに当たり、ボールが目の前に転がってきたのです。漫画みたいな状況ですよね。無我夢中で押し込み、同点ゴールを挙げることができました。




思い起こせば、紅白戦、練習試合、公式戦での全得点のうち、9割以上はワンタッチゴールであったように思います。私の場合、嗅覚でも何でもありません。こぼれ球をねらって走ったところで、100回に1回もこぼれてこないのが現実です。それでも、その1回を信じて、泥臭く、貪欲に走った結果、めぐりあえるチャンスだと思っています。




体が動かなくなるまではサッカーを続けたいと考えていますが、この強度でプレーをするのは、おそらく大学が最後です。


最後の1秒まで自分らしく、ゴールに「つっこんで」いきます。






もうひとつ、最高学年になってから特に意識していたことをお話しします。




私は、「自分と関わる全ての人々にとって、良い脇役でありたい」という夢をもっています。



謙虚なようでいて、かなり傲慢な夢です。しかし、教師を志すきっかけとなった考え方でもあります。




みなさんは自分の半生を顧みて、どのような場面で成長してきたと感じますか。


越えられない壁にぶつかったとき。仲間と協力して何かを達成できたとき。それぞれ想起する過去は異なるでしょう。



個人的な見解ですが、人は成長する場面において、そのときの人間関係が多大な影響を及ぼしていると考えます。



東京学芸大学蹴球部には、多様な環境で過ごしてきた部員が集まります。新体制が発足する当初、このような一面を手放しに長所だと言いきる自信がありませんでした。



たしかに、今までの環境では出会うことのなかった考えをもつ人と関われるのは、素晴らしいことです。様々な価値観に触れることで、人間として深みが出る。



しかし、サッカーの面ではどうか。プロを目指す者、目指さない者。プロの世界に挑戦していく選手にとって、もっと条件の良い環境があったのではないか。偉大な先輩方がサッカーとは違う道に進んでいく背中を見てきました。


どうしても今いる部員には、思い描く将来がどんなものであれ、蹴球部での経験をネガティブに捉えてほしくなかった。学芸は全員がプロを意識していない、いろんな人がいる大学だから。そのような理由でサッカーから離れてほしくなかった。




そして、誰にも言ったことはありませんでしたが、自分の中で最後の一年の目標を立てました。



それは、誰ひとり欠けることなく、夢に向かって成長できる組織を作ることでした。




新体制の方針を定めるために学年ミーティングを開き、いきなり出ばなをくじかれたのは、シーズン開幕前のことです。


チームを運営していく上で、最高学年が良い関係性を築けていることはとても大切だと思います。しかし、この時期の学年ミーティングは、限られた時間で多くのことを話し合わなければならず、なかなかうまくいきませんでした。


私たちの代は、優しすぎた。空気を読んで黙っていよう、言い返して揉めるのも面倒だ。遠慮と言えば聞こえはいいですが、こうして一部の人しか主張しない空間を自分たちで作ってしまった。このままの雰囲気では目標達成はおろか、チーム全体にも悪い空気が流れるのではないかと、危機感をもちました。




「心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである。」


これは、アメリカのグーグル社が発表した研究の成果報告の一文です。

「心理的安全性」とは、他者の反応に怯えたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出すことのできる環境や雰囲気のことを指します。



どうすればこの「心理的安全性」を作っていけるのか、成長できる組織を構築するために、自分には何ができるのか考えたとき、ある機会に同期からもらった言葉を思い出しました。



「他人の意見を理解し、整理できる。受け入れてくれるから自分のことを話しやすい。」



人前で発言するのが得意ではない人もいます。しかし個人的に話をすると、みんなしっかりと自分の意見をもっているんです。それなのにお互いの考えを知らずして、チームで一つになろうなんて、無茶じゃないですか。




それから、一人一人の思いの懸け橋になろうと、いろいろな場面で、たくさんの人から話を聞きました。私にすんなりと問題を解決に導く技量はありませんでしたが、言葉を選んで誰かの代わりに意見を伝え、調整する努力はしてきたつもりです。そんな立場の人がいてもいいのではないかと信じて、最後の一年を過ごしてきました。



本人は覚えていないかもしれませんが、チームへの貢献の仕方について悩んでいる、というキャプテンの話を本人から直接聞き、至らなさを感じる日もありました。キャプテンという役職は、とても難しいポジションです。だからこそ、四年全員で支え、負担を減らそうと話していました。本音としては、もっと楽をさせてあげたかったです。それでも彼の心は強く、チームを引っ張ってくれました。お世辞なしに、みんなから愛されるキャプテンでした。




同期のみんな、蹴球部での四年間はポジティブに捉えられているでしょうか。



結果が伴わなかった悔しさは、全員が痛いほどに感じていると思います。


それでも将来、この四年間が意味あるものであったと言える人生を送ってほしい。



まだまだ時間が残されている後輩たちがうらやましいですね。


関東一部の舞台は、彼らに託しましょう。卒業後も全力で応援しています。





最後に、東京学芸大学蹴球部を応援してくださる皆様に、この場を借りて感謝を申し上げます。


個人的に感謝を伝えたい相手には、この場を借りずに直接伝えていこうと思います。





それでは、来年から教壇に立ち、子どもたちに囲まれてニヤニヤしているであろう隼斗に質問をして終わりたいと思います。



Q1.幼少期に「小平の至宝」と称されるほどの輝かしいサッカー人生を送ってきた隼斗が、大学サッカーで最も輝いた試合を教えてください。


Q2.隼斗がハートを射止めた学科のマドンナは空手の達人だそうですね。たくさん惚気話を聞かせてもらいました。そんな彼女の好きなところはどこですか?巧みな表現力を存分に発揮してくれることを期待しています。


Q3.私たちの共通の話題と言えば、主務、おほしんたろう、耐え子、伊坂幸太郎のどれかでしたね。おすすめの一コマまたは一冊を紹介してください。





長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。






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